第111章

高橋遥が階段を降りると、古屋さんと出くわした。

古屋さんはロビーのソファに座り、顔には軽い疲労の色が浮かんでいた。おそらくずいぶん長く待っていたのだろう。

高橋遥が降りてくるのを見て、彼女は立ち上がった。「稲垣奥さん！」

高橋遥は足を止め、静かに言った。「さっき稲垣栄作と離婚協議書にサインしたところです。もう稲垣奥さんではありません」

古屋さんは残念そうな表情を浮かべた。

彼女はためらいながらも、口を開いた。「実は稲垣社長はあなたのことをすごく気にしているんです！彼と白井侑里の間には実質的な男女関係はないんですよ。高橋さん、もう一度考え直してみませんか？せっかくここまで来たのに.....